3人が本棚に入れています
本棚に追加
君が振られたあの春
「おっ、見て見て!なんかつぼみが出来はじめてるよ!」
僕がはしゃぐと、運転席の晴夫くんもチラッと外に目をやり、
「ほんとだ!かわいいね」
と微笑んだ。
「そういえば、優介くんも来年就職だけど、進路ちゃんと考えてんの?」
またまた、君は僕の親父か。
「まあそこそこね。」
適当に返事をすると、「またそんなこと言ってー」とか、「今のうちからしっかりしないと後で困るんだよ?」とかをしつこく言ってくる。そんなことより、だよ。
「そんなことより、来週式挙げるんでしょ?僕とドライブなんてしてる場合?まったく、お嫁さんが可哀想だわ」
「なんだよーそれ~」
と言いながら嬉しそうな顔をしちゃって。
君が振られたあの春も、僕は君が好きだった。多分、今も。
でも、自分の気持ちと現実に、ちゃんと向き合おうと思う。
大丈夫、桜は毎年咲くんだから。
完
最初のコメントを投稿しよう!