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僕は今、猛スピードで車を走らせていた。
隣の助手席には僕の愛する人が乗っている。
これからも、来世でも、ずっと一緒にいたいと誓い合った人。
そう、僕達はこれから一緒になるために今結婚式場に急いでいるのだ。
理由は自業自得で僕が準備に戸惑って彼女を迎えに行くのが遅くなったためだ。
『ねぇ、ちょっとスピード出し過ぎじゃない?』
彼女が僕の二の腕部分の服をクイクイと軽く引っ張りながら、心配そうな声で言った。
『もう後10分も無いんだよ!急がな…』
僕がその先の言葉を言う事は無かった。
信号が黄色から赤に変わり、横からフライングした他の車が突っ込んできた。
僕達が乗った車の方が勢いがありそのまま斜め前の電柱に激突していた。
僕達は即死だったらしい。
愛し合っていた2人は結婚する前に…あの世へ逝ってしまった。
それからだいぶ月日が経った春のこと
就職が決まり、後は大学の卒業式を待つ1人の青年がいた。
『はぁ〜、今日も1日特にやる事が無いんだよなぁ、アケミとどっか出掛けたいけど今日あいつバイトだっけか』
タカヒロは家までの道のりの土手を歩きながら呟いていた。
3時間前・・・別の場所で・・・
目を覚ました時、私はゴミ箱の上に倒れていた。
身体を起こすと何かがおかしかった。
辺りにあるものが全て大きく見え、道を歩いている人間が巨人の様に見えたのだ。
ショーウィンドウの鏡を見て私は言葉を失った。
なんと私の身体は猫になっていたのだ。
私は困惑しながらある匂いをキャッチした。
その匂いはどこか懐かしく、落ち着く匂い。
私はその匂いを辿り始めた。
3時間後・・・
私は全力で走っていた。
『ハァ…ハァ…。もう…足が千切れる…息ができない…』
猫になった私は野良犬にずっと追いかけられながらこの街にやってきた。
必死に逃げながらもあの懐かしい匂いを追いかけて。
匂いの主はきっとこの街にいる。だがもう私の意識は失われつつあった。
視界がボヤけまともに真っ直ぐ走ることさえ困難となっていた。
私は一か八か走っていた橋の上から飛び降りた。
『水が冷たいなぁ…もぅ力が…入らないゃ…』
私はもうダメだと確信した。霞んだ視界に誰かが映った様な気がしたが、私は意識を完全に失った。
私が目を開けた時、目の前にはこちらを心配そうに眺めている青年の顔があった。
私は生き延びたのだ。
思考回路が不安定なまま私は思い出す。
今目の前にいる青年の顔は、私の意識がなくなる前にも見た顔だった。
私が生きていることにほっとしたのか青年は安堵しながら私に喋りかけてきた。
『はぁ、良かった〜、ぜんぜん動かないから死んじゃったのかとヒヤヒヤしたぜ』
私は青年に抱きかかえられていた。
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