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が、その時。
夫の肩を、後ろから「ぽんぽん」と誰かが叩いた。夫が振り向くと、そこには「夢で見ていた」サプライズパーティーに出席していた面々が、ズラリと並び。その中からまだ若い翔子が歩み出て、夫に鏡を突きつけた。
「あなた、いつまでも夢の世界に浸っていないで。『現実』を見なさい!!」
その、鏡の中には。やつれた顔をして、まるで「もう余命が残り少ない」かのような、夫の顔が映っていた。そして気が付くと夫の周囲から、家の姿も、パーティーの面々も、車に乗った翔子と男も消え去り。後には、どこまでも続く漆黒の暗闇だけがあった。
――だ、だ、騙したなあ……?!
叫ぶように発した夫のその声は、誰に届くこともないまま。闇の中に、虚しく消えて行った。
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