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「そうよ、全てはあたしの計画通りに、ってことね。あなたは『共犯』であり『実行犯』であるのと同時に、あたしのおかげでこれから裕福な生活が出来るんだから。ひとりでどこかへずらかろうなんて、思わないことね? あなたとあたしは、夫を騙し、医者や病院を騙し続けた運命共同体、一蓮托生の仲なのよ。それを忘れないでね」
男は再び苦笑しながら、「はいはい、わかってますよ、ご主人様」と答え、車を病院前から発進させた。
+ + + + + +
それから翔子は「共犯の男」とレストランに向かい、簡単な祝杯をあげ。店を出発した車が、翔子の家の前に近付いた時。翔子は家の前に立つ人影を見て、何か不信感を抱き。それが誰だかわかった時、思わず声を上げていた。
「だ……だ、騙したわね?!!」
家の玄関前には、病院で寝たきりになり、「幸せな夢」を見ているはずの、翔子の夫が。ケガもなにもしていない、衰弱もほとんどしていない状態で、翔子を出迎えるかのように、すっくと立ち尽くしていた。
「ああ、騙したよ。病院の医者や看護師まで騙すのは、苦労したがね。あの妙ちくりんな施術を考え出した医者と看護師は、元々俺につきっきりってわけじゃなかったからな。まあ確かに、何か『とても幸せな夢』を見たような記憶は、かすかにあるけどね。
他の看護師たちには金を渡して、ずっと意識が戻らないことにしてもらっていた。だからあの医師の企みも、お前の企みも。俺には全部わかってたんだよ。まあこれも、あの医者の言葉を借りれば、『人を幸せにする嘘』だと言えるだろうな。もちろん、幸せになるのは、俺ひとりだがね」
翔子の夫は勝ち誇ったようにそう言うと、翔子に向かって「満面の笑み」を浮かべた。
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