桜の花が咲く頃に

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 こっそりネットで調べてみた私は、後悔した。  発症と同時にステージはⅣ。  加えて、五年以上生存率は三十パーセント以下。  そこに並んでいた言葉は、絶望以外の何ものでもなかったからである。  実際、母の場合も既に肺と肝臓に転移があり、すぐに手術できる状態ではなかった。  治療方はまず抗癌剤で転移した部分を叩き、それから乳房を全摘するという方針で決まった。  当初通院で行っていた投薬は、その後強い薬を使うため入院に切り替わった。  私は勤めながら慣れない家事ですっかり疲弊した。  それでもどうにか頑張れたのは、母が必ず戻ってくると信じていたからだ。 「すっかり髪、抜けちゃったわね」  病室で、母は寂しそうに言う。  髪はおろか眉さえも抜けてしまった母は、別人のようだった。  皮膚が敏感になり、せっかく買ったウィッグも被れない。  私がはじめて編んだ純毛の帽子が唯一被れると言ってくれたのは、少し嬉しかった。      ※  そして、年が明けた。  例年よりも静かな年越し。  そして、落ち着いた頃に手術となった。  手術後、これで全部取り切れたんですか、と主治医に父は尋ねる。
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