どうしてもわかりあえない人たち

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「……そうだね。大嫌いだよ。見えないもので人を縛り付けようとする、あの考え方がさ」  和也の肩を、健一が優しくたたく。 「今日はもう帰れよ。また明日、キレイな正装で出直してくれば?」 「うん……そうする。これ以上迷惑はかけられないしね」  和也はため息をつき、哲を見据えた。 「……ねえ、兄さん。ひとついい?」 「なんだ?」 「どうして、この件に首をつっこもうと思ったの? いくら学生が失踪してるからって、死体が出てきたわけじゃないんでしょ?」  処刑人である三美神だが、事件の捜査を手伝うことは珍しくない。しかしそれにはまず、死体が発見される必要がある。殺人鬼を処刑すべきと判断できるような、異様な死体が。 「警察に協力を依頼されたからだ。それ以外に理由はない」  堂々とした哲の回答に、和也は眉をひそめる。本音を読み解こうにも、哲は表情の変化は乏しく、難しい。 「そう……。わかった」  ほほ笑みながらも、ため息が漏れる。門を通っていく学生たちに背を向け、その場をあとにした。
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