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「瑠璃ちゃんもこういうの、似合いそうだよね」
「どうかな」
瑠璃は控えめに笑った顔を皐月に向けた。
「私が着ても変に見えるだけじゃない?」
今着ているのは、上品なマーメイド型のワンピース。優雅で保守的な、女性らしいものを好んでいた。
派手な顔だからこその強い印象もあり、実際の年齢より上に見られることが多い。
「そんなことないよ。瑠璃ちゃんスタイル良いからなんでも似合うって」
「そもそも好みじゃないの。ああいうの」
スープを口に運ぶ瑠璃は姿勢よく、一つ一つの所作が上品だ。
ふせる目元も濡れる唇も、トーストをもってかぶりつく姿もかわいらしくてしょうがない。
皐月と目が合う瑠璃は、素っ気なくそらす。それもまた、皐月にとって愛おしい行動の一つだ。
「ねえ、瑠璃ちゃん」
目を細める皐月に、瑠璃は不愛想な表情を向けた。
「いつか一緒にお買い物行こうよ。デパートとか、ショッピングモールに行ってさ。今日は俺が予定あるから、今度の休みにでも」
皐月にとっては精いっぱいの、デートの誘いだ。
「外に出るの、好きじゃないから」
冷ややかな声に、皐月の眉尻は下がる。
「でも、二人で、出かけたことないからさ、たまには、さ……一緒に行きたいなって」
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