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「考えとく」
親戚、というだけで付き合っているわけではないから、断られるのも当然のことだ。とはいえ休みのたびに毎回誘って、毎回断られる。毎回地味に傷ついている。
それを悟らせないように明るくつとめていたが、このときばかりはつい、弱弱しい声を出した。
「そんなに、忙しい? お仕事」
瑠璃は二重の大きな目を皐月に向ける。しんみりとした沈黙が続く中、瑠璃は首を振った。
「そうじゃないの。大学で出されるレポートが多くて」
「……そうだよね! 学部によっては課題たくさん出るもんね!」
瑠璃を困らせることも、重たい男だと思われることも嫌だった。
軽く息をついて、話を変える。
「……あのね。俺、今日、父親に呼び出されてるんだ」
「和也に? どうして?」
目をぱちくりとさせる瑠璃に、皐月は首を振る。
「わかんない。瑠璃ちゃんもわからないってことは、瑠璃ちゃんとは関係ないことなんだね」
「そうね。心当たりはないし」
それまで素っ気なかった瑠璃は、皐月が父親の話題を出したとたん口数が増える。トーストを食べながら皐月を見すえ、口元に手を当てた。
「じゃあ、実家に帰るの?」
「ううん。礼拝堂で待ち合わせしてる」
再び、瑠璃は大きい目をぱちくりとさせた。
「どうして? 冠婚葬祭?」
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