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「それもわからなくて。もしかしたら瑠璃ちゃんがなにか知ってるのかなって思ってたんだけど」
「何も聞いてないから、御三家とか三美神がらみじゃない気がする。……百合園家の間で何かあったか、それこそ和也が個人的に用があるか、じゃない?」
瑠璃の言葉は淡々としていた。トーストをスープに浸しながら食べ進める。
皐月は目を伏せ、つぶやいた。
「……そう、だよね。じゃあ、たいしたことじゃない、か」
父親である百合園和也と皐月の関係性は、決して良好とは言えない。というより、一方的に皐月が避けていた。
処刑人の仕事は、特定の家系にのみ許された世襲制の公務だ。西園寺家、九条家、百合園家といった、御三家から輩出される。処刑の仕事に関わりたくなかった皐月は、大学進学と同時に実家を出た。しかし直系である皐月が交流を完全に断ち切るのは難しい。
それは西園寺家の直系である瑠璃も同じだ。とはいえ瑠璃は、皐月とは事情が違う。実家を出た身ではあるものの、積極的に処刑の仕事に関わっていた。
皐月が唯一、瑠璃のことを理解できない部分だ。今日も不満をひた隠し、にっこりと笑う。
「じゃあ、早く帰れるかも。帰りにフルーツパーラーのケーキ買ってくるよ、瑠璃ちゃん、好きでしょ?」
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