どうしてもわかりあえない人たち

1/10
前へ
/209ページ
次へ

どうしてもわかりあえない人たち

 黒髪か、暗い茶髪。化粧は眉毛を描き、薄付きのリップだけ。ブラウスに膝下スカートか、落ち着いた色のワンピース。シューズかローファー、低いヒールのパンプス。  似通った格好の女子大生たちが、大きいアーチ門の中に次々と入っていく。  聖スーザン女学院大学は、都内に住む誰もが一度は耳にするお嬢様大学だ。宗教色が強く、学則も厳しい。見てわかるとおり、髪型や服装もこと細かに指定されている。  郊外に建てられたそこは、学生か近場の住民でなければ寄り付かない。周囲にあるのは、学生が使う広々としたグラウンドと、静かな住宅ばかりだ。  当然、学生たちも物静かで、はしゃぐような声はめったに響かない。が、この日、門を通る女子大生たちは騒めきだっていた。手前で一度立ち止まり、不審なものを見る目を門のわきを向ける。  そこでは、男である西園寺(さいおんじ)(てつ)がたたずみ、登校中の学生たちを見すえていた。  かっちりとしたグレーのスリーピーススーツに、彫刻のように整う華やかな顔。長身と、二重でくっきりとした凛々しい目が、大人しい女子大生たちをとにかく威圧している。 「……いや、兄さんめっちゃ怖がられてんじゃん」  哲の隣で、九条(くじょう)健一(けんいち)が眉尻を下げた。 「そんなんじゃますます警戒させるだけじゃねえ?」
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加