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どうしてもわかりあえない人たち
黒髪か、暗い茶髪。化粧は眉毛を描き、薄付きのリップだけ。ブラウスに膝下スカートか、落ち着いた色のワンピース。シューズかローファー、低いヒールのパンプス。
似通った格好の女子大生たちが、大きいアーチ門の中に次々と入っていく。
聖スーザン女学院大学は、都内に住む誰もが一度は耳にするお嬢様大学だ。宗教色が強く、学則も厳しい。見てわかるとおり、髪型や服装もこと細かに指定されている。
郊外に建てられたそこは、学生か近場の住民でなければ寄り付かない。周囲にあるのは、学生が使う広々としたグラウンドと、静かな住宅ばかりだ。
当然、学生たちも物静かで、はしゃぐような声はめったに響かない。が、この日、門を通る女子大生たちは騒めきだっていた。手前で一度立ち止まり、不審なものを見る目を門のわきを向ける。
そこでは、男である西園寺哲がたたずみ、登校中の学生たちを見すえていた。
かっちりとしたグレーのスリーピーススーツに、彫刻のように整う華やかな顔。長身と、二重でくっきりとした凛々しい目が、大人しい女子大生たちをとにかく威圧している。
「……いや、兄さんめっちゃ怖がられてんじゃん」
哲の隣で、九条健一が眉尻を下げた。
「そんなんじゃますます警戒させるだけじゃねえ?」
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