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生まれながらの赤毛に、大きなアーモンドアイ。真っ赤なピアスとクロスタイが、陽気な印象を与えている。しかし、黒いスリーピーススーツと、腰に下げた二丁の拳銃が、ただならぬ雰囲気を漂わせていた。
哲の力強い二重の目が、健一に向く。
「ニコニコしたところでどうなるんだ? それで事件がすぐに解決するわけでもあるまい」
哲の話し方と声は、整った容姿以上の威厳があった。
「そりゃそうだけどさ~。ここの女子大生は、男ってだけで委縮するらしいから、気を付けないと。だから事件の捜査もすすまないんだよな?」
健一の視線は、哲を通り越した場所へ向かう。制服警官がバツの悪い顔を浮かべ、たたずんでいた。
「……申し訳ありません、こんな状況で。時間をずらせばよかったですね」
丸っこい顔に丸っこい目が印象強い警官は、遠慮がちに続ける。
「朝礼拝の前にしか門が開かないもんで、学生はみんなこの時間に来るんです」
「なるほど。この時間を逃せばもう中に入れないわけか」
哲は少し身を乗り出し、アーチ門から中をのぞく。
この正門から、芝生にはさまれた道が続いていた。奥にはレンガ調の建物がいくつか建てられ、その中でも一番大きな建物はここからでもよく見える。三角屋根にステンドグラスがついたそれは、大学を象徴する礼拝堂だ。
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