どうしてもわかりあえない人たち

2/10
前へ
/209ページ
次へ
 生まれながらの赤毛に、大きなアーモンドアイ。真っ赤なピアスとクロスタイが、陽気な印象を与えている。しかし、黒いスリーピーススーツと、腰に下げた二丁の拳銃が、ただならぬ雰囲気を漂わせていた。  哲の力強い二重の目が、健一に向く。 「ニコニコしたところでどうなるんだ? それで事件がすぐに解決するわけでもあるまい」  哲の話し方と声は、整った容姿以上の威厳があった。 「そりゃそうだけどさ~。ここの女子大生は、男ってだけで委縮するらしいから、気を付けないと。だから事件の捜査もすすまないんだよな?」  健一の視線は、哲を通り越した場所へ向かう。制服警官がバツの悪い顔を浮かべ、たたずんでいた。 「……申し訳ありません、こんな状況で。時間をずらせばよかったですね」  丸っこい顔に丸っこい目が印象強い警官は、遠慮がちに続ける。 「朝礼拝の前にしか門が開かないもんで、学生はみんなこの時間に来るんです」 「なるほど。この時間を逃せばもう中に入れないわけか」  哲は少し身を乗り出し、アーチ門から中をのぞく。  この正門から、芝生にはさまれた道が続いていた。奥にはレンガ調の建物がいくつか建てられ、その中でも一番大きな建物はここからでもよく見える。三角屋根にステンドグラスがついたそれは、大学を象徴する礼拝堂だ。
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加