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哲は、女子大生たちのいぶかしげな視線に気づき、身を引いた。
「宗教系の大学ですからね。男は中に入れないんですよ。なんでも、長い伝統のしきたり、とかで……」
「それなら俺たちに頼っても一緒なんじゃないのか」
「三美神のお力をもってすれば、さすがに大学側も従ってくれると予想したそうですが……」
哲が警官を見すえると、警官の表情は緊張でこわばる。まばたきを繰り返し、言葉を選ぶようにして続けた。
「その……何度も説得してみたんですが、結局、理解してもらえず……」
「そうだろうな、スーザンは、特に」
ふと、健一が思い出したように声を上げる。
「あれ? そういえば和也は? あいつが遅刻するなんて珍しいな」
腕時計を確認した哲が、静かに返した。
「ああ……和也にしては遅い」
「呼んだ?」
背後から、声がした。
振り返ると、和也がほほ笑みながら立っている。その姿に、健一が顔をゆがませた。
「うっわ。なんだそのかっこ」
和也の白いスリーピーススーツは、真っ赤な飛沫ひまつに染まっている。顔の返り血をぬぐうことすらしていない。
「……遅かったな」
哲は動じることなく、和也を健一との間に入れる。が、さすがに健一は触れずにいられなかった。
「いやいや、待て待て。説明がいるだろ。なんでそんなことになってんだ? 虐殺事件にでも遭遇したのか?」
「人を助けただけだよ」
和也は平然と答える。
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