どうしてもわかりあえない人たち

3/10
前へ
/209ページ
次へ
 哲は、女子大生たちのいぶかしげな視線に気づき、身を引いた。 「宗教系の大学ですからね。男は中に入れないんですよ。なんでも、長い伝統のしきたり、とかで……」 「それなら俺たちに頼っても一緒なんじゃないのか」 「三美神のお力をもってすれば、さすがに大学側も従ってくれると予想したそうですが……」  哲が警官を見すえると、警官の表情は緊張でこわばる。まばたきを繰り返し、言葉を選ぶようにして続けた。 「その……何度も説得してみたんですが、結局、理解してもらえず……」 「そうだろうな、スーザンは、特に」  ふと、健一が思い出したように声を上げる。 「あれ? そういえば和也は? あいつが遅刻するなんて珍しいな」  腕時計を確認した哲が、静かに返した。 「ああ……和也にしては遅い」 「呼んだ?」  背後から、声がした。  振り返ると、和也がほほ笑みながら立っている。その姿に、健一が顔をゆがませた。 「うっわ。なんだそのかっこ」   和也の白いスリーピーススーツは、真っ赤な飛沫ひまつに染まっている。顔の返り血をぬぐうことすらしていない。 「……遅かったな」  哲は動じることなく、和也を健一との間に入れる。が、さすがに健一は触れずにいられなかった。 「いやいや、待て待て。説明がいるだろ。なんでそんなことになってんだ? 虐殺事件にでも遭遇したのか?」 「人を助けただけだよ」  和也は平然と答える。
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加