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「どう見ても助けたやつの格好じゃねえだろ。殺した、の間違いじゃないのか? 」
「失礼だなぁ。健一くんも僕のこと信用してないわけ? さすがに仕事以外で殺すことはないよ」
にこやかに話す和也だったが、顔にかかる血しぶきが無駄に狂気を感じさせる。
「女性が襲われそうになってるのを助けてあげただけだよ。人を刺したけど殺してはないから」
「おまえの殺してないはいまいち信用できねえんだよ」
返り血の量を考えると、深手を負わせたことは明白だ。
「そんなんだから百合園家は怖いって言われるんだぞ? ほら見てみろ、このビビり具合」
健一は警官を指さす。血まみれの顔を向ける和也に、警官は青い顔で敬礼した。
「それに、女の子のウケも、よくない」
厳格な学則のもとで過ごす女子大生にとって、和也の格好は悪目立ちどころではなかった。女子大生の顔は恐怖心に満ち、ひそひそと話しながら門を通っていく。
しばらくすると、礼拝堂のほうからスーツ姿の女性が走ってきた。門の手前で立ち止まった女性は、和也の姿に悲鳴を上げる。
「ひいぃ! なんですかその格好は! 学生たちに悪影響です! 今すぐお帰りください! 」
和也は哲に顔を向け、判断を仰ぐ。哲はそばにいた警官に尋ねた。
「彼女は? 」
「外部との連絡を担当してる事務の方です」
「これだから男は嫌なんです!」
事務員の金切り声が周辺に響き渡る。
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