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ひっかけクイズ
私にはクイズ好きな友人がいる。
その日も、夕方の気晴らしにふらっと家を抜け出して近所の公園に行くと、その友人がベンチに座っていた。
私が彼の隣に座り挨拶を交わすと、彼は早速クイズを出してきた。
「シャンデリアって10回言って」
私は指を一つずつ折って数えながら、シャンデリアと言った。
「シャンデリア
シャンデリア
シャンデリア
シャンデリア
シャンデリア
シャンデリア
シャンデリア
シャンデリア
シャンデリア
シャンデリア」
すかさず友人が尋ねる。
「毒リンゴを食べたのは?」
「白雪姫だろ。ひっかけクイズだな」
「さすがにわかったか。じゃあこれは?」
そう言って友人は新しい問題を出した。」
「『ハイツ』って10回言って」
私はまた、指を折って数えながら言った。
「ハイツ
ハイツ
ハイツ
ハイツ
ハイツ
ハイツ
ハイツ
ハイツ
ハイツ
ハイツ」
すかさず友人が尋ねる。
「アンデルセンの国は?」
「ドイツじゃなくて、デンマークだろう?」
すんなりと答えた私に、友人は感心した。
「良く知ってたね」
「ああ、実は昨日うちの子が絵本をママに読み聞かせてもらってるの横で聞いてたんだ。『人魚姫』だよ、一番最初に『これはデンマークのお話です』なんて書いてあったから」
「なるほど、それでか。それはちょっとタイミングが悪かったなぁ」
「なあ、何かもう一問くらいだしてくれよ」
私は、なんだかずるをしたようで彼に申し訳なくなったので、私はそう仕切り直した。友人は、嬉しそうににっこりと笑って、新しいクイズを出してくれた。
「じゃあ『メール便』って10回言ってくれる?」
「メール便
メール便
メール便
メール便
メール便
メール便
メール便
メール便
メール便
メール便」
「おとぎ話は英語でなんて言うでしょうか?」
「――メルヘン?」
「残念、正解は『フェアリーテイル』。メルヘンはドイツ語なんだよ」
意表を突かれて、私は苛立つよりも感心してしまった。
「すごいな、君が考えたのか?」
「ああそうだよ。昨日、眠る前に考えたんだ」
「君、ドイツ語がわかるのかい?」
彼がドイツ語ができるとは初耳だ。
「ああもちろん。ドイツ語も英語もわかるよ、少しだけどね」
「どうしてドイツ語を?」
彼が私の質問に答えようとしたとき、私は彼の背後に、すごい勢いで突進して来るモノクロの毛むくじゃらを見つけた。
私は叫んだ。
「まずいぞ! ポチだ」
近くにいたほかの仲間も叫んだ。
「みんな! 田中家のポチだ! 逃げろ!」
みんな騒ぎながら逃げていく。
私も、友人と一緒にすぐそばのツツジの植え込みの下に飛び込んだ!
ボーダーコリーのポチが飼い主に引っ張られて見えなくなると、植え込みの下から這い出した彼が答えた。
「僕のご先祖さまには、アメリカンショートヘアーとジャーマンレックスがいるからね」
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