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思春期
「浩太、おはよう」
「はよ。絢音」
扉を閉める音に続いて出てきた浩太の背中に声をかける。出てくるのを待っていたのに、そっけない態度にがっかりしつつも、浩太らしいと安心する気持ちもあった。それに、あたしの足音が追いつくまでちゃんとそこで待ってくれている。
本当は手を繋いで歩きたいけれど、そこはちょっと我慢する。こうしてとなりを歩いているだけで、今は充分。
「ねぇねぇ、浩太。今年はどんなチョコがいい? 手作りにしよっか」
「……別に、チョコとかいいし。またからかわれるだけだろ」
ふいっとそっぽを向いちゃった。別にあたしはからかわれても何を言われても、浩太とならいいのに。浩太が喜んでくれるのなら、どんなチョコだって作れる気がするのに。
でもどんなチョコだって浩太なら本当は喜んでくれてるよね。
あのね、浩太。今年は初めて手作りに挑戦してみようと思うんだ。だってあたしたち、もう中学生だもん。来年は受験で忙しいかもしれないし、今年は頑張るよ。だから、照れてもいい、ぶっきらぼうでもいいから、受け取ってね。
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