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結婚?
結婚、するの? 浩太が? 誰と?
あたしじゃない。……あたしじゃ、ないよ。
そのあともお母さんは話を続けていたけれど、もう聞いていられずにあたしは部屋に逃げ込んでベッドに顔を埋めた。柔らかな枕が止まらない涙を吸い取っていく。濡れてひんやりとする枕カバーの分だけ、あたしは浩太が好きだった。まぶたが熱くなって鼻の奥が痛くなる分だけ、浩太を想い続けていた。
どうしてよ、浩太。あたしがきっといちばん、浩太のことを好きなのに。どうして、あたしじゃないの?
いくら考えても答えなんて分からなかった。浩太の隣に立つあたしじゃない女。あたしはどこで間違えたんだろう。どうしていれば、それがあたしになっていたんだろう。
悲しくて悔しくてぐちゃぐちゃになって、いつの間にか寝ていて明るい窓の外からの光で目が覚めたとき、こんな思いが浮かんでいた。そう思わせたのはあたし自身の気持ちか、それとも夜の闇の深さだったのだろうか。
『今年のバレンタイン。最後に浩太に告白する』
これで最後にするから、あたしの方を振り向いて。
お願いよ、浩太。あたし、浩太をほかの女になんて渡したくない。あたしの浩太は、誰にも渡さない。
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