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僕は疼く身体を慰めようと、タブレットをサイドテーブルに置こうとした。すると通知を知らせるランプがついていることに気づく。それは部屋で待つオメガに申し込みがあったということだ。
誰かが僕に申し込んでくれている。
そう思ってそのページを開いたら、そこには『You』の名前と共に『19:00』とある。
19時・・・?
見れば今の時刻は7時半。
あ・・・仕事に行ったんだ。
今日は金曜日。だからユウさんは仕事に行くためにここを出て、終わったらまた来てもいいかと訊いてくれているんだ。
きっと眠っている僕を起こさないようにそっと出ていったのだろう。
僕のこと、気に入ってくれたのだろうか。
黙って行ってしまったのできっと好みではなかったのだと思ったけれど、そうではなかったらしい。またここに来てくれるみたいだ。
でも僕はいま発情期中で、なのにこのままあと半日も待たなくちゃいけないの?
断ろうか。
そして他のアルファが来るのを待つか。
せっかくクラブに来ているのに、どんどん熱くなる身体を自分で慰めるのはもったいない。それに発情中のオメガなら、いくら訳ありでもアルファは来てくれるだろう。
そう思ったのに、僕はその申し出にOKをタップした。
もう一度あの人に会いたい。
だから早く来て・・・。
そう思って僕は自身に手を伸ばした。
たくさん精を流し込んでくれたからか、小さな波が絶え間なく起こるけれど、意識を飛ばすほどではなかった。
だからいつもならすぐに飲まれて飛んでしまう意識はどうにか保たれ、その間に水分や軽食を摂ることができた。けれど、それも午後を過ぎてからは難しくなってくる。
早く、来て・・・。
発情中の身体はいくら慰めてもその熱は冷めず、それどころかどんどん上がっていく。息も苦しく、動かす手も辛い。
昨夜たくさんしてもらった後孔は柔らかく、僕は出来うる限りその指を挿れるけれど、欲しいところまで届いてくれない。それがもどかしくて中を擦るけど、一向に満足しない身体に心が追い詰められていく。
ぐちゅぐちゅと卑猥に響くその音は、おそらく昨夜のアルファの精だ。それをできるだけ長く留めたくて手の動きを緩めるけれど、その意識とは反して身体が激しさを求める。その身体と意識の捻れが苦しくて、僕は喘ぎとも呻きともつかない声を上げ続ける。けれどそんな苦しみも薄れ、僕の意識はついにやってきた大きな波に飲まれていく。
どれくらい経ったのか。
沈んでいた意識の底でバタンという音が聞こえ、僕の意識が急速に覚醒する。目を開けると僕はまたベッドの中に一人横たわっていた。前と同様に身体は清められ、寝具も替えられている。そして残るベッドの中の温もり。
もしかしていま帰ったのだろうか。
あの音はドアが閉まる音だったのかもしれない。
そう思って急いで起き上がろうとしたけれど、僕の身体は鉛のように重くてすぐには起き上がれなかった。
もう行っちゃったよね。
起き上がることもままならない身体で追いかけても、きっと間に合わない。そう思って僕は諦めてそのままベッドに横になった。
身体はだるいけど、気持ちはすっきりしている。
発情期が明けたのだ。
全く覚えていないけれど時間はかなり経っていたらしく、スマホを見ると月曜日の朝7時過ぎだった。
ずっと一緒にいてくれたの・・・?
タブレットを確認すると、ユウさんが入室したのは金曜日の18時53分。それから退室が月曜日の7時5分だから、やはりさっきの音はユウさんが部屋を出ていった音だったようだ。
その間ずっと、僕のところにいてくれた?
見れば食事のあとや替えた寝具が何枚か置いてある。僕が発情の波に飲まれている間、ユウさんは僕の相手をしてくれながら僕の世話をしてくれていたらしい。そしてそのまま、また仕事に行ったのだろう。
ユウさん、ちゃんと眠れたのだろうか?
僕の発情期は重い。
ずっと意識が飛ぶほど発情し、電池が切れると気絶するように眠る。そしてまた起きると意識が飛んで気絶するまで発情し続ける。そしてそれは発情期が明けるまで続くのだ。
ちゃんと僕が寝てる間に休んだだろうか。
食事をして眠って、お風呂に入れただろうか。
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