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僕が発情しててもフェロモンは感じないはずだから、僕のことは放っておいてくれてたらいいんだけど、こんなに僕のこともしてくれるくらいだから、きっととても優しい人なんだろう。
なんだか胸がドキドキする。
ユウさんが来る前に意識が飛んでしまったので、彼のことはほとんど覚えていないけれど、それでも彼の手の優しさや僕を包み込む温もり、そして激しい熱を覚えている。
優しいのに激しい人。
身体に残るユウさんの痕跡とかすかな記憶に、僕の胸が激しく鼓動する。そしてまだ余韻を残す身体は発情期が明けても容易に火がつき、僕はそっと後孔へと手を伸ばした。
こんなこと初めてだ。
いくら発情期が明けたばかりでまだ身体が燻っていたとしても、発情期でもないのに自慰をするなんて今まで無かった。だけど熱くなる身体に僕は迷わず指を突き入れた。するとそこは柔らかく、2本の指を難なく飲み込みその隙間から精が溢れ出てきた。
たくさん・・・注いでくれたんだ。
指を挿れただけで溢れるその精は動かす度に卑猥な音を立てて溢れ出し、僕の身体をさらに熱くする。
「ん・・・んっ・・・ぅん・・・っ」
理性が残る頭はその行為を恥じ、喘ぎを我慢する。けれど身体は正直で、次第に激しくなる指の動きに上り詰め、頂点を極める。
「あっ・・・っ」
四肢が強張り、小刻みに震える。けれど触らずとも固く上を向いた昂りはそのまま何も吐き出さずびくびくと卑猥に震えていた。それでもいいようのない快感が身体の満たし、力が抜けていく。
僕は指を引き抜くとそのままベッドに沈み、しばらくその快感に浸る。
後ろから溢れる精とは対称的に、自身からは何も出なかった。それは吐き出すものが無くなるくらい僕の身体を悦ばせ、僕の望むままに精をお腹の中に注ぎ込んでくれたからだ。
僕のことだけを考えてくれた行為。
いくら考えても思い出せないユウさんの顔。それでも僕の心には彼のことが深く刻まれてしまった。
僕はだるい腕を伸ばしてタブレットを取ると、ユウさんをお気に入りに登録した。そうすると、僕が入店したらあちらに通知が行くのだ。
もし向こうも僕を気に入ってくれていたら、また来てくれる。
もう一度、会いたいな・・・。
オメガに生まれて辛いことしか無かった僕の人生で、初めて優しくしてくれたアルファ。もちろん僕のうなじを噛んだ人も優しかったけど、でもその人とは全然違う。
ユウさんも、少しは僕の事気に入ってくれているといいけど・・・。
そう思いながら、僕は目を閉じた。
チェックアウトの時間までまだ少しある。それまで休ませてもらおう。
発情期の間ノンストップで欲情し続けた身体はだるく、駄目押しの自慰までしてしまった。
とりあえず帰れるだけの体力を回復して、明日からの仕事はその後考えよう。課長も無理しなくていいって言ってたし、もし無理ならもう一日休んで・・・。
そこで意識が途切れ、僕は眠りに落ちた。次に起きたのはチェックアウト一時間前を知らせるタブレットの通知音で、僕は慌てて起き上がった。
無意識に飛び起きたけど、意外と身体が回復していることに気づく。
たくさん満たされたからかな。
そう思いながらシャワーを浴び、僕は家へと帰った。
アルファと過ごした発情期は、予想以上に身体の調子を良くしてくれた。身体は軽く、気持ちもすっきりして気分がいい。それは仕事にも表れ、仕事の効率を上げた。
やっぱりオメガにとって、アルファの存在って凄いんだな。
出来ればオメガであろうと一人で生きていきたい。誰にも頼らず、自分が生きる分は自分で稼ぎ、誰にも迷惑をかけず暮らしていきたい。けれど僕にはそんな生き方は無理だった。だからアルファのパートナーが必要だったんけど、お金のためだけじゃなく、アルファという存在はこんなにも心も身体も癒してくれるものなのかと初めて知った。
今までそんなアルファと出会ったことがなかったから、所詮性欲を満たすだけの存在だと思っていたけど、こんなに心も軽くなるなら、もっと早くパートナーを探せばよかった。
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