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「初めまして、だろ?」
口調が変わった。
砕けたその言葉は、ずっと聞き慣れていたものだった。
は、と顔を上げれば困ったように笑いながら両手を広げた真守と目が合った。
最後の約束を思い出した。
『真佳、全部忘れよう。ここでお互いに背を向けたとき、俺たちは他人だよ。』
確かに私たちは、あの空港でそう約束をした。
じゃあもし────もし、その後に私たちがまた出会ったとしたら?
他人に戻った私たちが出会ったとしたら、私たちはどうなる……?
何もかも忘れて、恋人でも兄妹でもなくて、ただの他人としてまた会えたとしたら?
都合のいいことばかり考えてしまう。
けれど、もし、もしもそれが都合のいいことではななかったとしたら。
それが許されるのだとしたら。
私がこの差し出された手を取ったとしたら。
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