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◎
◎、◎、◎、◎………
昼休み、ボクを囲む生徒たちの心臓辺りに、一人ひとり違う大きさで、ドクンドクンと一人ひとり違う速さで脈をうつ◎が、ワッペンのようについている。
うん、みんな元気そうでなによりだ。
「みんなー今日チャイムならないからそろそろ座ってー!」
学級委員長が声を上げる。
うちのクラスには、学級委員長しか声を上げてくれるような人はいないから、先生達は助かっているらしい。
クラスメートは、皆委員長を信頼しているので、委員長が言ったことはふたつ返事で聞く。
あとボクの言ったことも。
全員が席につき、先生が来るまでザワザワと周りの友達と話している間、ボクは皆の健康観察だ。
◎、◎、◎、◎、◎、◎、◎…………
クラスメート全員の胸に◎が着いている。
残念ながら、自分で自分の◎を見ることはできないので、100パーセントクラス全員◎と言い切る訳にはいけないけれど。
しばらくして、年配の社会の先生が入ってきた。
61歳。再任用で働いている先生。
胸に着いているのは◎ではなく数字の953。
高血圧&歳だから仕方がない。
それに、ガンの家系と言っていたから原因はガンだと思われる。
さすがにおじいちゃん先生まで救う義理はない。
…勘のいい方は気づいているかもしれない。
ボクが、人の余命が見える能力を持っていることを。
1000日以上生きる事ができる人の胸には◎が、1000日未満しか生きる事ができない人には余命の日数が浮かび上がっており、◎も数字も心臓と同じ速さでドックンドックンと動く。
ただし、数字が0になるのは、余命が24時間未満の時なので、数字が0になったからといって、いきなり死んでしまう訳では無い。
そして、◎が浮かんでいる場合は、詳しい余命はわからない。
そして、この数字はボクの行動しだいで変えることが出来る。
正確にいうと、死んでしまう理由を無くしてしまうという事。無くしてしまえば、その人は死ぬ事がないので、難しいけれど救う事は可能だ。
まあ、さっきの社会の先生とかの、寿命や病気などが原因だと、ボクはただの学生なので、もちろん救うことはできない。
誰でも救えるチョーパワーみたいなのがあったらゴリゴリに使うのだけれど。
この力で不便なところは、何が原因で死んでしまうのかが分からないところだ。
あ、さっきの社会の先生は勘なんだけれど。ずっと「わしはもう長生きせんからのぉー」って、一人称も話し方もふざけて言ってるからなんとなく想像がついちゃうのである。
とまあ、ボクの能力の説明はこんな感じ。
最近は健康観察ぐらいしか能力は使っていないのだけれどね。
こんなボクは医者とかになるべきなのかもしれないのだけれど、まだ若いボクにとっては考えることなんてできない。
また、ボクの何も無い、ちょっとだけ人と違う日常をまた見てくれたら嬉しいかも。
じゃあ、またね。
何も無い、なんて、そんなものこの能力をもつボクにはなかったということは、まだ知らされていなかった。
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