2 始まりの鬼と陰陽課

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2 始まりの鬼と陰陽課

始まりは奈良時代末期。 権力争いに巻き込まれた皇太子が無念の死を遂げた時、は発見された。 京を襲った荒々しく恐ろしい始まりの鬼が姿を現してから、徐々に鬼の数は増えていった。 当時の典薬寮(くすりのつかさ)に属していた呪禁師(じゅごんし)が調べたところ、鬼が住む彼の世と人間が住む此の世の境には鬼門が存在し、彼らは門を通ることで二つの世界を行き来していたのだ。 呪禁師たちはなんの手立ても講じれず、やがて鬼が蔓延る魔国になるのをお畏れた朝廷は、鬼が出現した京から遷都した。 その後、平安京中期になると始まりの鬼は陰陽寮からと呼ばれた。 小鬼、赤鬼、青鬼、鬼一口と多種多様な鬼は京や村にたびたび姿を現したが、最古の鬼神は平城京を襲った以降姿を現したことがなかった。 しかし、平安末期に差し掛かると、最古の鬼人は京に再来し、腹心となった三大妖怪を引き連れ、人の世を恐怖に陥れた。 さらに、人間と共存していた悪しき妖と徒党を組むと、人間の世界を引っ掻き回し混沌たる時代にした。 しかし、この混沌たる世の中を憂えた妖もいた。人間の世界を愛し、人を殺めるよりも娯楽を楽しむ妖だった。その妖は百鬼夜行から抜け、人間と共に戦った。後に鬼がいなくなると三大妖怪を除いた妖の王となった。 最古の鬼神、三大妖怪、すでに人の世に集落を作った鬼、妖怪達を根絶するために戦った十二の陰陽師、呪禁師、帝、武士、僧、妖王。 彼らの偉業の成果により、集落の鬼は絶滅し、最古の鬼神は討ち倒され、彼らの強力すぎる力に恐れをなした三大妖怪は地方に散り、鬼どもはあの世へと逃げていった。 彼らはさらなる鬼の出現を防ごうと鬼門(きもん)を封じるべく京に集まった。 時の朝廷は彼らを―――十二神将(じゅうにしんしょう)と呼んだ。 その後、十二神将(じゅうにしんしょう)妖王(ようおう)を除き、時代が変わるごとに後継者に引き継いで鬼門を封じていた。 そして二十五年前、結界を張っていた十二神将のうちの一人であり、歴代の中でもっとも強力な呪力を持つ高等呪禁師が亡くなった。 彼は老体でありながらも、一人で十二神将の力を持つ最強の呪禁師だった。 そのため、彼が亡くなった後の結界は、全ての鬼門を封じ込めることは出来なくなった。 ───そして現在、鬼は鬼門をくぐり人の世に再来した。鬼は悪しき妖と徒党を組み、平和な人の世に影がさしたのだ。 古くは律令制において中務省(なかつかさしょう)に属し、現在は東京の警視庁公安部に存在している "陰陽課"  その実態は、鬼門の結界の封印、また、妖や精霊を使役し人間の世界に足を踏み入れた鬼の討伐を目的とし、古の陰陽寮に属する陰陽師の役割を担っている。
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