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3 陰陽課エース
その中でも、若手ながら特に才ある頭角を見せる呪術師がいた。
彼の名は 早良 知親
陰陽課のエースと謳われる青年だ。
百合を想起する白磁のような美貌を持ち、きめ細かく透き通る肌はまるで穢れを知らず、スラリと伸びる手足と細身の体型を強調している鼠色の背広は彼の静謐な雰囲気に相応しい。
しかし、彼の魅力はそれだけではない。
普段は背広で隠されてしまっているが、彼が共用部もしくは任務中に、その人並み以上の高身長に引き締まった体躯を曝け出しでもしたら、大人しい繊細な男だと見誤った初見の人は彼への夢を打ち砕き、それだけでなく、その魅力に気づいてしまった人のこれまで積み上げてきただろう自尊心も崩してしまう。
早良はそんな、雄々しい一面も持っているのだ。
彼の年齢は二十五歳、この若さですでに数多くの妖怪、鬼絡みの事件を解決し、その評価は同世代の中でも抜きん出ている。
早良はごく稀に存在する見鬼の才を生まれ持った人間で、その力を駆使し今の地位まで伸し上がった。
見鬼の才を持っていることはすでに本庁の者の間では周知の事実で、早良の美しい容姿も相まって、次期十二神将の後継者、才色兼備の陰陽師と噂されている。
しかし、これから偉業を成していく人生だというのに、早良には今後の先行きに対する漠然とした不安があった。
それは、ついさっき食堂で同じ陰陽師である友人に、自分の未来を占われた結果にあった。
どうやら僕はもうすぐ死ぬ運命らしい。
妬み嫉みは良くある、むしろそっちの方が良かったとさえ早良は思う。
ただ、それを占ったのは紛れもなく陰陽師であり、信用できる友人で、さらに自分よりも占術に長けていたため、早良は余計にその占いの結果に悩むことになったのだ。
死、か……。
早良は自分の死について悶々と悩んでいたはずが、ふと陰陽課に配属された時に上司から聞かされた話を思い出した。
たしか、僕が生まれた年に亡くなった最強の十二神将がいたんだっけ?
早良と同年代の同期が多かった事から、上司は早良達の生まれた年に十二神将の一人が後継者を立てずに亡くなった事を告げた。
その時は鬼門を封じる力を妖王の臣下とともに補填したが、彼の力には及ばずいくつかの鬼門が再び出現し、十二神将の力が衰えたと考えた鬼は次々と地方に開いた鬼門から現れた。
十二神将の一人のくせになんて無責任なと亡くなった彼を責める上司を早良は冷めた目でいた。
そして最近は、三大妖怪が東京で姿を現したとい噂を早良は聞いた。
まさか、三大妖怪に殺されるなんてことは……はあ、考えるのはよそう。
最強の十二神将の死、鬼門の出現、四大悪鬼の再来、はあ、大変な時代がきてしまった。
兄さん。俺はあなたを殺した存在を見つけるまで、絶対に死にません。
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