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4 命星の輝き
ぼんやりとした頭でただなんとなく視線が向いた、歩いていた廊下の窓の外に広がる青空が眩く光る。
命星! あんなに輝く星は見たことない、一体誰のだ!?
早良は窓に近寄り、まだ陽が天高く昇っている空を見上げた。しかし、その星の輝きをすでに群青色で上塗りしたかのような空が広がっているだけで、命星を再び見ることは叶わなかった。
そういえば最近、天文課が騒いでたな。
それは、十二神将の一人が亡くなってから、最近になって久しぶりに彼の呪力と同等の力を持った命星が昼の空に現れたという事だった。
もしかして、あの星を輝かせた人はまだ自分の呪力に気付いていないのか?
早良はその強すぎる命星に胸騒ぎを覚えた。
隣で歩いていた青年は早良を心配して顔を覗き込み「なーに、見てんだ?」と言った。
早良は声を掛けてきた青年に、空を見上げていた目を向ける。早良と同じ陰陽課の陰陽師で同期でもあり、さっき食堂で早良の死を占った張本人でもある友人、一ノ瀬 徹だ。
一ノ瀬は自分が占った結果を早良が気にしているとは知らずに、いつもの変わらない人懐っこい笑顔を浮かべる。
一ノ瀬が笑うと特徴的なえくぼに視線がいってしまうが、彼の顔もまた端正に整っており、愛嬌のある目じりが下がった目に厚い唇、柔らかな雰囲気を持つ好青年だ。
「命星が、流れたんだ」
「え! 嘘、どこ?」
そう言って一ノ瀬は窓から頭を出した。そよ風が彼の茶色の髪の毛をなびく。早良はその様子を可愛らしい、と思いながら一ノ瀬の髪を整えてあげた。
恥ずかしそうに眉を下げながら「ありがとう」と一ノ瀬は言った。
「もう消えてしまったよ」
「俺も見たかったな」
すると、二人の側に気配を静かに現した男は声を掛ける。
「残念ですが命星は見鬼の才を生まれ持った者にしか見えませんよ、見たいなら天文課にある命星望遠鏡を使わないとね」背後から凛とした声が聞こえて二人は振り返る。
「ちぇ、残念、って賀茂さん!?」一ノ瀬は驚いた声で男の名を呼ぶ。
賀茂と呼ばれた男は、早良の知り合いではなく、どうやら一ノ瀬の知り合いらしい。
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