〜*〜*〜エピローグ〜*〜*〜

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「スゴッ 何ここ」  その部屋には、家具や家電も全て揃っていて、今すぐ生活が始められるようになっていた。  〝RRRR〟  その時、椿からの携帯が鳴った。 「椿? 何どういうこと?」 「樹がよくやってくれたからって、虎から二人に結婚祝いだって。気に入った?」 「え、何言ってんの。こんな……。だいいち僕達はもう……」 「今日は帰って来なくてもいいからなー」  椿はそう言うと電話を切った。 「あ……切れちゃったよ」 「俺もちゃんと断ったんだよ……でもさ『俺に恥をかかせる気か』って凄まれて」 「もう! 虎の奴何考えてんだよ」  リビングの中心に立ちグルリと部屋を見渡した。 「ここ何階? 何部屋あるの?」 「十一階 部屋はマスター入れて五つ」 「いったいいくらするんだ」 「金額は教えて貰えなかった」 「……」  樹はぐるっと部屋を見渡し、横目に見える自分の背丈の倍はあるサッシに向かった。 「これ凄い景色だね……」 「う、うん そうだね」  慌てて樹の側に寄る。 「あそこに見えるの桜の木だ。満開になったら…… きっとリリーが喜ぶ」  樹はリリーと花見に行き遊んだことを思い出していた。 「ふふ」  思わず微笑んでしまった。 「いっくん?」 「リリーは落ちてくる花びらで遊ぶのが大好きだったんだ」 「そうだったんだ、じゃあ景色がよく見える所に置いてあげようね」 「葉月くん……うん、僕ここ気に入ったよ」 「え? あ うんいいところだよね」  てっきり怒って断ると思っていた樹の反応に戸惑う。 「あ……でも 楓との約束」 「楓の部屋もあるよ。前みたいに遠くないんだからいつでもくればいいし、ここに一緒に住んだっていいよ」 「葉月くんは楓のお気に入りだからね」  そこまでお膳立てされていたらもう何も言うことはない。 「葉月くん、ここに住むって……虎に関わるって覚悟できてるの? 本家が怖いとかいうレベルの話しじゃないんだよ?」  樹は真剣な面持ちで言った。 「そんなもん こっちに出てきた時から覚悟しまくりだよ」  正面から樹を抱きしめる。 「はぁー わかったよ。葉月くんのご両親には申し訳ないけど、時間を掛けてわかってもらおう……僕も覚悟を決めるよ」  広く高い天井を仰ぎながら樹は言った。 「よかったぁ。でもこれで駄目でも諦めはしないけどね」 〝チュッ チュウ〟  二人は数ヶ月ぶりのキスを交わした。 「葉月くん……諦めないでくれてありがとう」 「当たり前だろ。俺がいっくんを手放すわけないじゃないか」  葉月はそう言いながら、再び樹の顔中に啄むようにキスをした。 「あっさり部屋を出ていったから、案外大した執着はなかったんだと思ったのに」 「残念でした。執着しまくりでした」  今度は首筋や肩にも跡が付く程のキスをする。 「もう! しつこい!」  照れる気持ちを隠すように葉月の顔を両手で押し返しながらも樹の目尻にはキラリと涙が光っていた。                              END  
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