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お年寄りの一人暮らしは珍しくもない。近頃はスマートフォンを使いこなしている年配者はざらにいる。コタツでくつろいでいる、あるお婆さんのスマートフォンから着信メロディが流れた。
「非通知か、誰だろうねぇ」
そう言ってお婆さんはスマートフォンを手に取り通話ボタンを押す。
「もしもし」
「オレオレ。オレだよ、オレ」
「あぁ、孫のよしお……」
「そうそう、よしおだよ。俺よしお」
「の子供のゆっちゃんかえ?」
「よし……ゆ? あぁ、そうそう、ゆっちゃんだった。ゆっちゃんなんだよ、俺」
「どうしたんだい? そんなに慌てて」
「いやぁ、俺さぁ、ちょっとバイクで事故っちゃって」
「そりゃあ大変なこった! 怪我はなかったのかい?」
「それがさぁ、ちょっと足の骨を折っちゃて、うぅ痛い」
「すぐ病院に行きなさい。おばあちゃんが救急車を呼んでやろうか?」
「あ、それは大丈夫。自分で病院に行けるから。それよりさぁ、治療費が無くて俺の口座に振り込んで欲しいんだけど……だめ?」
「そんなのいいに決まっとるやろ。大切なひ孫の為だ。いくらだい?」
「二百万」
「……それっぽっちならお安い御用だよ」
「ごめんなぁおばあちゃん、俺のために。足りないといけないからもう百万足してもらえるかな?」
「三百万ってことかい? よし、任せなさい」
「じゃあさ、今から通帳とカードを持ってATMへ行ってよ。着いたらまた電話してね。この着信番号に折り返してくれればいいからさ」
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