13人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「おばあちゃん、まだか?」
「こっちも混んどるわ。ひぃ、ふぅ、みぃ……十四人おるわ」
まじか! どんだけメジャーなATMコーナーに行ったんだよ。
「おばあちゃん? 今どこのATMにいるの?」
「イオンモールだよ」
そういうことか。そりゃ混んでるわ。
「おばあちゃん、そういうことは先に言ってくれよ。逆に空いてる銀行はないの?」
「ないねぇ。最初に並んだ銀行の列が一番列短かったけどねぇ」
くそっ、待つしかないのか。
「直接手渡しは駄目かね? 振り込むための現金を今持っとるけど」
なにぃ! その手があったか。顧客のほうから提案されるとは、こんなパターンもあるのか。
「……しかたねぇ、じゃあその現金持って騙返駅のロータリにある噴水前に行ってよ」
「噴水前だね、分かったよ」
「あ! ちょっと待って。おばあちゃんの今日の服装教えてよ」
「どうしておばあちゃんのファッションを知りたいんだい?」
「いや、おばあちゃんのファッションに興味はないよ……マスクしてるでしょ。顔が分かりにくいから、別の人と間違えたくないんだ」
「そうかい。今日は正面にトラのドアップがプリントしてあるパーカーに、下は側面に二本の白いラインが腰から裾までまっすぐに入った鶯色のジャージを着てるよ」
「了解。おばあちゃん、ナイスなファッションセンスだよ」
「そうかい? ありがとう」
「じゃあ後でね」
最初のコメントを投稿しよう!