桜と結びついた恋

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 隆太と真澄は同じ高校だった。生徒会役員だった真澄を遠くから見て憧れていた。  高校に入学したての隆太はバドミントンが部ではなく同好会である事に落胆した。中学時代に真剣にバドミントンをやっていたため他の部活に入る気にもなれず、週に二回だけの活動だが仕方ないと諦めようとしていた。  その時、生徒会主催の新入生向けの部活説明会があった。  同好会を部活に昇格させる場合の説明を担当したのが二年生の生徒会役員である真澄だ。 『新入部員勧誘のチラシ作りをお手伝いします』  隆太はさっそく同好会の先輩二人に話し、真澄の協力を得る事になった。 『青柳真澄です! 最低あと二人の部員を集めれば部にできるけど、活動の事を考えたらもう少し多い方がいいよね?』 『はい』 ハキハキと話を進める真澄の手腕に驚き、高校生は凄いなと尊敬した。  新入部員勧誘のチラシは同好会の先輩二人と真澄が進め、右も左も分からない隆太は従うばかり。チラシの貼り付けくらいしか役に立てないと思った。  真澄がバトミントン同好会三人に堂々と提案書を見せた。 『今まであまり活動をしていなかったから、部のレベルが分からないじゃない? チラシだけじゃ伝えきれないよ』 真澄がくるりと隆太を向き、驚きでどきっとした。 『体育館の空いてる時間に体験型の見学会をしない? 経験者がいる事を伝えるために』 体育館を押さえてくれるという。バドミントン同好会三人は真澄の熱心さに驚いた。本来の仕事ではなく真澄が臨機応変に対応したのだと後から聞いた。 『岩崎くん、協力してくれる?』 話し合いにあまり加われなかった隆太が経験者だと言ったのは一回だけだ。それを覚えていてくれて嬉しくなった。  見学会の進行も真澄が手伝ってくれるという。この人は何者だと隆太は興味を抱いた。  見学会の準備をしている隆太に真澄がスポーツドリンクを差し入れしてくれた。 『ありがとうございます』 『頑張ってね!』 小さくガッツポーズをしてくれた。 『応援してるから』 その言葉にもう一度お礼を言うため追いかけたかったが、真澄はすぐに他の学生に声をかけられた。  真澄のおかげでバドミントン部は部員十名になりその後も安定して活動できた。  真澄さんは何故あそこまでしてくれたのだろうと不思議に思っていた。  ある日一階の教室の窓から桜を見ていると真澄が一人でいるのが目に入った。  手に大量の書類を持ち、桜の根本に転がるペットボトルをひょいっとゴミ箱に入れると勢いよく駆け出して、他の学生に何かの案内をしている。  あの人は誰に対してもあんなに熱心なんだ。  桜が舞う校庭で汗を拭って、笑顔で駆け出す真澄を眺めていた。
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