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隆太が高校一年生の二月。
次期生徒会の選挙が行われている。隆太はそっと真澄に投票した。
その帰り、少し雪が積もった桜の枝にふと目を奪われた。どうして目を奪われたのかよく分からなかった。
高校二年生に進級し、桜が咲いた。
生徒会長になった真澄が堂々と全校生徒の前に立つ。
真澄さんは桜がよく似合うと隆太は思った。そして、冬に桜の枝が気になったのは桜の下を走る真澄を思い出したからだと気づいた。
桜を見ていると桜と共にあった記憶が目に見えるかのようにはっきり浮かんだ。
『正式に部活になったよ。本当によかった!』
真澄の笑顔が隆太の中で蘇った。
桜並木の通学路を歩けば校門で挨拶をする真澄と会う事がある。その度に隆太は少し緊張するのに真澄は誰にでも同じとびきりの笑顔なのだ。
桜と真澄が結びついて、一年前の真澄を鮮明に思い出す。そして今の真澄はもっと素敵な人だ。
どうしてこんなに凄くて、尊敬できる人がいるのだろうかとぼんやり考えた。
真澄の卒業式。
涙の気配を抑えた真澄の卒業の挨拶は素晴らしかった。
桜舞う中、生徒会で記念撮影をしているのが見えて、遠くから眺めた。メンバーの真ん中にいる真澄は赤い目で爽快な笑顔を浮かべている。
三年生になった隆太は桜を見る度に真澄を思い出す事に苦しみ始める。
真澄とはもう会えないと理解していても思い出す。
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