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四月の終わり。
大学入学の少し前に付き合い始めたので、もうすぐ一か月だ。
ゴールデンウィークが始まる。連休のうち二日間はバドミントンサークルがあるがそれ以外は暇だ。だけど学生会に所属する真澄は忙しいかと思い、遊びに誘うかどうか迷っていた。
「隆太くん。ゴールデンウィークは遊びに行かないの?」
「学生会はいいんですか?」
真澄から誘ってくるのが意外なだけで、本当は嬉しい。隆太ばかりが好きなのではないかという不安が無くなる。だけどつい、いいんですかと聞いてしまうのだ。
真澄が顔をしかめる。またやってしまったと隆太は俯いた。
「平気だよ」
どこかいじけたような声色。真澄は高校生の頃とは違うと隆太も理解した。だから真澄のイメージではなく今の真澄を見なければ。
四月が終わり桜はほぼ散った。高校時代の真澄が頭に浮かばなくなったのでほっとしていた。
「私、ここに行きたいの」
真澄が選んだのは弘前の桜。
桜を見ればあの時の真澄が蘇ってしまうと隆太は危惧したが、違うと気がついた。
今の真澄と一緒に桜を見れば桜と結びついた真澄を上書きできるかもしれない。
「いいですね。行きましょう」
真澄が心底嬉しそうにした。
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