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「そう。あなたも私にして欲しいことや私の行動に我慢していることがあるでしょう?」
「いや……」
「正直に」
妻は真剣な顔をしていた。俺は高級レストランでゲップを出すように、胸の奥から陰鬱とした気持ちを遠慮がちに吐き出した。
「まあ、それなりに」
よろしい、と軽く頷いてから妻はさっきテーブルの上に置いたメモ帳を手に取り、それを一枚ずつ分け始めた。
「だから、譲り合いましょう。公平になるように。システマティックに」
「システマティック?」
まるで今から神経衰弱でもするかのように、妻はメモ用紙を俺の前に並べはじめた。
「そこに並べたのはあなたが私にして欲しいこと」
そう言って、次に妻は自分の前にメモ用紙を並べはじめた。
「こっちは私があなたにして欲しいこと」
俺の目の前にメモ用紙が十枚、妻の前にメモ用紙が十枚並んでいる。妻が俺の前に並べられたメモ用紙の上にペンを置いた。
「じゃあ十個、お互いに要望することを書いていきましょう」
「たとえば?」
「う〜ん。寝る前は必ず歯を磨いてほしい、とか」
「磨いてるよ!」
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