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「だからね、夫婦生活を円滑にするにはこの方法だと思うの」
ローテーブルを挟んで向かい側に妻が座った。はっきり言ってそこに座られるとテレビが見えない。
「私にもダメなところがあると思うの。でも、それはお互い様だから」
今日は俺の応援するパイレーツのオープン戦だ。昨シーズンの富士投手には伸びしろを感じたんだよなぁ。
「どちらか一方が我慢して成立する結婚生活ってナンセンスだと思わない?」
富士投手、今シーズンは主軸となって活躍する予感がするんだ。俺はそれを見届けなければいけない。富士投手のサクセスストーリーを見逃すわけには、
プチン
妻がテレビの電源を切った。
「あーっ!」
「あーっ! じゃないのよ。私の話、聞いてる?」
俺は真っ黒になったテレビの画面を未練がましく見つめながら、妻の問いかけには頭をポリポリかくことで答えた。
妻は深いため息をついてから、もう一度言うわね、と話し始めた。
「だからね、私たちが夫婦生活を末長く続けていくためには、お互いの譲り合いが必要だと思うの」
「譲り合い?」
妻はトランプぐらいの大きさの、なにも書かれていない白いメモ帳をローテーブルに置いた。
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