酒場にて②

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「ああ、ルーエちゃんは知らなかったのかい?この町の近くで咲く暗闇で光る特殊な花だよ。それを見た人は幸せになれるっていう言い伝えがあるし、結構綺麗だから人気があるんだ。それを見にこの町まで来る人もいる位。」 「そうなんだ。ちょっと見てみたいかも。」 ルーエはそう相槌を打ってからお酒を飲んだ。 酒屋の店主はそんな彼女を見守りながら話を続けた。 「もう少ししたら花屋に星降る花は並ぶんじゃないかな。気に入ったら買ってみるのもいいかもね。おじさんの子供の頃は、花屋で買わなくても外のあちこちで月降る花が咲いていたものだけどね。人に毟られちゃったのか、環境の変化が原因なのか、外で咲いている数は昔と比べて減っちゃったんだよね。」 そして、酒場の店主の旦那は記憶を思い出すかのように目を閉じてこう言った。 「思い出すな。子供の頃、月降る花が一か所に沢山咲いている場所を見つけた事があってね。あれは一生忘れられないな。すごく幻想的だったよ。」 「その場所は今はどうなったの?」 「残念だけど土砂災害で潰れてしまったよ。あの時はすごくがっかりしたものだよ。」 「そっか。それは残念だったわね。」 ルーエはそう言って、ちびちびとお酒を飲みながら、(そんな記憶に残る光景なら、セイリーンと一緒に見たかったな。)と思った。 それを人は一般的にデートという事を彼女はまだ気が付いていなかった。
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