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「うう。ここは?」
ふとルーエが目を覚ますと屋敷のソファの上だった。彼女の上には寒くないようにと気を遣ってくれたのだろうか、高価そうな毛布が掛かっている。そんな彼女の様子を見て、近くにいたこの屋敷で飼われているスエが駆け寄って来た。
「ルーエ。大丈夫かい?僕の為に脚立を取りに倉庫に向かったんだろう?そこで、すごく質の悪い妖精に襲われたって聞いて…。ごめんなさい。こんな事になるとは思わなかったんだ。」
すらすらとスエは喋っていて、それはルーエの常識から考えれば異常な事である筈だった。しかし、あんな恐ろしい目に遭った後だと、そんな細かい事はどうでもいい気がして、彼女は彼を抱き寄せた。
(温かい。どうして動物の体温ってこんなにホッとするんだろう。)
暫く、ルーエがスエを抱き締めていると、彼は恐る恐る「ルーエ。気分が悪いのかい?」と尋ねて来た。彼女は「ううん。平気。ただ、色々びっくりして。」と返事をした。
それから、ふとルーエは疑問に思って質問をした。
「スエは無事に木から降りられたのね。セイリーンが助けてくれたの?」
「そうだよ!ご主人様が空を飛んで助けてくれたんだ!使い魔の癖に何をやっているんだって怒られちゃったよ。」
「そう…。」
彼女は自分の雇い主が変な化け物を倒したとか、空を飛んだとか、目の前の猫が使い魔だとか、色々と衝撃的な情報を知って一杯一杯になりながらも、どうにかその一言だけ返事をした。
(取り合えず、ここは普通の勤め先じゃない。それだけはよくよく分ったわ。)
ルーエは心の中でぽつんとそんな事を思った。
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