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突然の告白とその返事
ふとドアが開く音がして、ルーエが顔を上げると、そこにはセイリーンが立っていた。
一度彼の姿になった化け物に騙された彼女は体を強張らせたが、スエは「ご主人様!」と声を挙げて喜びながらセイリーンの元に駆け寄ってしまった。
彼はスエが喋った事に驚いたような顔をして、一旦は彼女の顔色を窺うようにオドオドと見詰めて来たが、すぐに視線を外して困ったような顔をした。
そして、セイリーンはふらふらとスエに近付くと、気持ちを落ち着かせる為にか撫でようとしたが、肝心の彼に「ご主人様は撫でるのが下手なんだからやめて!」と言って断られて肩を落とした。
(この挙動不審さはセイリーン本人だわ。)
ルーエはそう確信して、体の強張りを解いた。
そんな彼女の気持ちも知らないまま、セイリーンはスエを叱った。
「ス、スエ。駄目じゃないか。人前では喋るなと言っただろう。」
「確かにそう言われたけれど…。ルーエは他人じゃないよ。だって、ご主人様が好きな人で未来の奥さんなんだろう?そんな相手を他人だなんて冷たい、」
「スエ!」
彼は顔を真っ赤にして、大きな声で自分の飼っている猫であり使い魔であるらしい存在の名前を呼んだ。すると、スエは「なあに?ご主人様。」とまるで邪気の無い声ときょとんとした瞳で、見上げて来た。
セイリーンは顔を赤くしたまま深々と溜息を吐くと、「少しの間、向こうに行っていて。」と言った。スエは「はーい。」と良い子の返事をすると、部屋から出て行ってしまった。
取り残された二人の間に気まずい沈黙が落ちる。
彼は咳ばらいをすると、どうにかこうにか話し出した。
「あ、あの。まず、君を怖い目に遭わせちゃって、ごめんね。あ、す、スエは喋るし、こっちは変な術を使うしで、」
「私って、将来セイリーンと結婚する運命なの?」
ルーエは先ほどスエが言った事が気になったので、喋っているセイリーンを半ば無視して直球で聞いてみた。
彼女は自分が雇い主を呼び捨てにしている事や、敬語を使っていない事すら気が付かなかった。それだけ気持ちが動転していたのだろう。
そして、彼の方はと言うとただでさえ赤い顔を更に真っ赤にして、「う、ぐ。」と変な声を立てて目を泳がせた。
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