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「そ、それは違う。た、確かに俺は不思議な術が使えるけれど、出来損ないだし、運命なんて大げさな物は分からない。そ、そのただのスエの勘違いだよ。一般的に人間は恋愛感情を持った相手と結婚する事が多いって教えたから…。」
そこでセイリーンは腹を括ったかのように、しっかりとルーエの顔を見ながら口を開いた。
「俺は君が好きなんだ。」
そう言った彼の表情はとても真剣で美しい造作も相まって迫力があった。
彼女はそんな男らしいセイリーンの様子に、思わず息を呑んでしまった。
「あ、あの。セイリーンが好きだって言ってくれるのは悪い気はしないわ。でも、何がなんだか分からない事が多すぎて…。」
それが今のルーエの精一杯の返事だった。
そんなルーエの言葉に彼は慌てたようにこう返した。
「そ、それはそうだよね。ああもう。もっと告白をする時は、ちゃんと時間と場所を選ぼうと思っていたのに。全部がグダグダだ。」
そう言うと、セイリーンは肩の力が抜けたのか、急にクスクスと笑い始めた。そんな彼につられて、ルーエもなんだか笑ってしまった。
(こうやってセイリーンと笑っていると、変な化け物に襲われたのが悪い夢だったみたい。)
彼女は心の中でそう呟いていた。
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