怪しい男からの紹介

2/4
前へ
/112ページ
次へ
「はあ。これからどうしよう。酒場の親父さんはああ言ってくれたけれど、今は不況だから簡単に仕事なんて見つかりそうにないし。村に帰るのだけは嫌だなぁ。」 酒場を出たルーエはそう独り言を言いながら、とぼとぼと歩いていた。元々、 彼女は辺鄙な場所にある村で生まれた。そこでは同世代の人間は殆どおらず、働く先もなかったので、思い切って町に出て来たのだ。 幸い、小さいながらも部屋を借りる事が出来、人の良い女将さんが経営する宿屋に雇ってもらうのに成功して、充実した日々を送っていたのだが…。そこが潰れてしまったのである。 ルーエはこれから自分がどうなってしまうのか不安で堪らなかった。そんな時に、その男が現れたのである。 「お嬢さん。」 古めかしいローブを着た怪しい男は、彼女にそう声を掛けた。勿論、ルーエはそんな男の事など完璧に無視して、歩みを進めて行った。外で知らない人間に声を掛けられても立ち止まってはいけないと、彼女は町で知り合った人間達からきつく教えられていたからだ。 しかし、男の次の一言でルーエは思わず立ち止まってしまった。 「お嬢さん、私を無視していいのかな。割の良い勤め先を紹介してあげようかと思ったんだが。」
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加