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「はあ。これからどうしよう。酒場の親父さんはああ言ってくれたけれど、今は不況だから簡単に仕事なんて見つかりそうにないし。村に帰るのだけは嫌だなぁ。」
酒場を出たルーエはそう独り言を言いながら、とぼとぼと歩いていた。元々、
彼女は辺鄙な場所にある村で生まれた。そこでは同世代の人間は殆どおらず、働く先もなかったので、思い切って町に出て来たのだ。
幸い、小さいながらも部屋を借りる事が出来、人の良い女将さんが経営する宿屋に雇ってもらうのに成功して、充実した日々を送っていたのだが…。そこが潰れてしまったのである。
ルーエはこれから自分がどうなってしまうのか不安で堪らなかった。そんな時に、その男が現れたのである。
「お嬢さん。」
古めかしいローブを着た怪しい男は、彼女にそう声を掛けた。勿論、ルーエはそんな男の事など完璧に無視して、歩みを進めて行った。外で知らない人間に声を掛けられても立ち止まってはいけないと、彼女は町で知り合った人間達からきつく教えられていたからだ。
しかし、男の次の一言でルーエは思わず立ち止まってしまった。
「お嬢さん、私を無視していいのかな。割の良い勤め先を紹介してあげようかと思ったんだが。」
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