怪しい男からの紹介

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「ああ、知り合いなんだ。私は彼女と同じ学び舎で席を並べて研鑽をし合った仲なんだ。これで少しは安心したかい?それじゃあ、これが君に紹介した勤め先の住所だ。一応、面接をするから明日のお昼頃に尋ねるようにね。レイアンからの紹介だと家主に言えば、話は通じるから。」 そう言って、男はルーエに無理矢理一枚の小さな紙切れを押し付けると、ふらふらした足取りですぐ近くにあった角を曲がってしまった。 「待って。もう少し詳しく話を!」 そう言って、ルーエは走って彼を追いかけて角を曲がったが、その先の道にその怪しい男の姿は見付からなかった。 「一体、何だったんだろう。変な男。」 そう呟いた彼女は暫くぼんやりしていたが、幾度か通行人に邪魔そうな目で見られて正気を取り戻し、外で飲み直す気にもなれなかったので、我が家に帰る事にした。 ルーエは家に帰るとソファに座って、男から押し付けられた紙切れを見返してみた。そこには、確かに町はずれの住所が書かれていた。しかしー。 「こんな所にメイドが必要な位大きな屋敷なんてあったかしら?」 彼女は思わず、そう呟いた。前にルーエがその住所の近くまで行った時には、その辺りは森になっていて人っ子一人見なかったからだ。 (あの怪しい男にからかわれたのかしら?でも、森の中に屋敷があるのかも知れないし…。あの男の言った話が本当だったなら、やっと働き口にありつけるチャンスね。よし、一応行くだけ行ってみましょう。何も無かったり、危なそうだったら、そのまま帰ってくればいいし。) ルーエはそう決断すると、立ち上がって夕飯の支度をする事にした。
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