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やけに着飾った挙動不審な男
そして、次の日。
ルーエが指定された時間に住所の場所まで行くと、そこには確かに森の木々に隠れるようにして大きな屋敷があった。ただ、その屋敷はどう見ても普通の勤め先と言うよりは…。
(完璧に吸血鬼が住んでいる屋敷か、幽霊が出る屋敷じゃない。)
彼女は万が一にも未来の雇い主になる可能性のある人間に聞かれては不味いので、口には出さず心の中でだけそう呟いた。
ルーエは人並に繊細な所のある少女だったが、働く先を得たい一心で勇気を出して、屋敷に近付くと来訪者の存在を告げるベルを鳴らした。
すると、屋敷の中からバタバタと人が移動している音が聞こえたと思ったら、すぐに玄関のドアが開かれた。
そこに立っていたのは長年日の光に当たっていないような白い肌に、濃い黒い色の長い髪を持っている一人の青年だった。その容姿はどちらかと言うと女性的で繊細な美しさがあった。
その服装はやけに着飾っており、これから何かパーティーにでも出席するのかと言った具合だ。恐らく、本物であろう。宝石が嵌め込まれたアクセサリーも幾つか身に付けている。
彼はその青い目を泳がせながら、「あ、あの。君がレイアンの言っていた…。」と言って黙り込んでしまった。
彼女は自分の雇い主候補に好印象を与えようとどうにかニッコリ微笑んで、「はい。ルーエと申します。この屋敷でメイドとして雇ってもらう為の面接に来ました。」と言った。
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