32人が本棚に入れています
本棚に追加
それから、男はオドオドと屋敷の応接室にルーエを案内すると、自分はセイリーンと言うと名乗った。それから、この屋敷では猫を飼っているがその世話は出来るか、他人の屋敷を掃除するのに抵抗はないか、何時から来れるのか等の質問をした後、こう言った。
「こ、こっちとしては君を雇いたいと思っているだけれど…。きゅ、給料はどれぐらいがいいかな?メイドを雇うのは初めてで、どれぐらい支払ったらいいか分からなくて。ひ、1月に金貨3枚位で平気?」
「金貨3枚ですか?!」
ルーエはびっくりして思わず聞き返してしまった。何故なら、前に働いていた宿屋ではその5分の1以下の給料で働いていたからだ。これは別に前の職場が薄給だったわけではなく、彼の提示した給料の金額が普通よりも高過ぎるのだ。
(た、確かにこれは割の良い仕事だわ。メイドの仕事でこんなに給料をもらえるなんて!)
そんな風に彼女が内心喜んでいるとは知らずに、セイリーンは何処か怯えたような顔をした。
「え、えっと。ふ、不満があったりする?ウチとしてはこれ以上の額を出すのは難しくて。」
「不満なんてありません。1月に金貨3枚で充分です。一生懸命働かせて頂きたいと思います。」
ルーエがそう慌てて言うと彼は「よ、良かった。それじゃあ、明日からメイドの仕事をお願い。」と言って微笑んだのだった。
そのセイリーンの微笑みは奇妙に子供っぽく、彼女の記憶に残ったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!