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こうしてルーエがセイリーンにメイドとして雇用されて、あっと言う間に1週間の時間が流れた。
言い付けられた場所の掃除に洗濯、それから昼と夕方に彼の為に料理をする事。それから、飼っている猫の世話など。そんなアレコレが彼女の仕事だった。
ルーエはその仕事にあっさりと慣れ、それなりに雇い主とも上手く付き合っていた。世の中にはメイドに横暴な振る舞いをする雇い主もいるらしいが、彼はオドオドと不審な振る舞いをしながらも、彼女に最低限の気遣いは見せてくれた。
ルーエは日が経つごとに悪い職場ではないと感じ始めていた。
そうして気が緩んだのか、ある日彼女は仕事を終えて帰ろうとする時にこんな事を口にしてしまった。
「そう言えば、セイリーン様はずっと立派な格好をしていますね。何か理由があるんですか?」
そう。彼は彼女がメイドとして屋敷に通うようになってからも、ずっと初めて出会った時のように着飾った格好をしていた。
(丸一日家の中にいる時も、あんな格好をしているから趣味なのかと思ったけれど…。セイリーンって話している内に分かって来たけれど、自分の着る服なんてどうでもいいタイプなのよね。って、メイドが雇い主の服装に口を挟むなんて良くないかしら。)
そう思ったルーエが慌てて謝罪と質問の撤回をしようとしたのだが、それよりも彼が答える方が早かった。
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