徒桜

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「全部揃ったでしょ?」  最後に自分のノートを差し出してくれた彼が、自信ありげな表情で悪戯に笑った。  あたしは、何度も頷くしかない。 「半分持つよ」  半分と言いながらも、あたしよりも多めにノートを手に取ると、彼は廊下へと向かう。あたしは慌てて追いかけた。  彼の背中を見つめてから、俯いてしまう。  また、ありがとうって言いそびれた。  職員室から出ると、彼は困ったように眉を下げてあたしを見た。 「これからはさ、ちゃんと言いたいこと言った方がいいよ」  引っ込み思案なあたしには、痛いくらいに刺さる言葉。言われなくても、そう出来るならしたい。なんて、心の中で思ってみたって、あたしはただ困ったように笑うことしか出来なかった。
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