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学年が変わる。クラスも変わってしまうかもしれない。隣の席の彼とも、お別れ。
春を感じさせる陽気な風は、もう五月上旬の気温を運んでいるらしい。
季節を先取った桜がもう満開だ。だけど、晴天の澄み渡る青空とは裏腹に、あたしの心は暗雲をつれてくる。
片想い。
せっかく隣の席になれたのに。
もっと話せばよかった。
もっと笑えばよかった。
ちゃんとありがとうって言えたら良かった。
後悔ばかりが沸き起こってくる。
隣にいたのに。
少しだけだけど話せるようになったのに。
あたしは彼の何も知らなかった。
学年が上がるよりもずっと早く、学校自慢の満開の桜を見ないままに、彼は転校して行ってしまった。
こんなに綺麗で儚い桜。風が強く吹くと、咲き誇っていた花びらをひらり、またひらりと舞い踊らせる。
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