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ペンギン
とある動物園の中央には岩山を模したエリアがある。その模された岩山の周りにはプールが作られており、そこに生体展示された動物が自由に泳げるようになっているのだ。そのエリアには絶えず人が訪れており、動物園の中でも一二を争う人気者であることを象徴しているようだった。
その動物であるが「ペンギン」と呼ばれている鳥である。短い足(実は長いのだが曲げているだけ)をペタペタとさせ、手のように見える羽根を左右に震わせながらのヨチヨチ歩きは見ているだけで愛らしい。それに加え直立する卵を思わせる白い腹がずんぐりむっくりとした体格に見せ、丸みがあるものを可愛く感じる人間心理を擽るということもあり、人気者の地位を確立していると言えるだろう。
ペンギンを見物する黒山の人集りの中に二人組の少年があった。腕白そうな少年と真面目そうな少年の二人組である。腕白そうな少年は可愛いものを愛でるような柔和な顔つきで、真面目そうな少年はどこか憂いを含んだ悲しそうな顔つきである。
「どうした? ペンギン可愛くないのか? 葬式みたいな顔しやがって」
「いや、可愛いよ」
「だったら、もう少し楽しそうな顔しろよ。俺まで葬式みたいな顔になっちまうよ」
「ごめん。あいつら見てたら『最後のペンギン』のこと思い出しちゃって。もうどうしようもないんだけどさ」
「なんだよ、最後のペンギンって? 絶滅しそうな種類はいるけど、絶滅することはないだろ?」
真面目そうな少年はそれを聞いて首を横に振った。
「実は違うんだよ。もう手遅れな話だけどね、ちょっと長い話になるけど聞いて欲しいな、飽きたって言うなら話打ち切るから、次の動物見に行こ?」
真面目そうな少年は「最後のペンギン」について、腕白そうな少年に説明を始めるのであった。
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