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神の使いである天使。その階級は大天使からエンジェルズまで様々だ。一番下の階級である「繭」たちは翼もまだ生えていない。人間の子供と同じ見た目をしている。
「みなさん、卵はありますね?」
「はあい!」
元気よく返事をする子供達。みんな大事に大事に卵を手の平の上に乗せている。
繭たちが最初にやる事は命を芽吹かせることである。「命の木」には卵が実として宿る。そこから自分がこれだと思うものを摘んできて肌身離さず持ち続ける。そして卵を孵すのだ。何が生まれるのかは個人で異なる。
ひよこが生まれる場合が一番多いが、ウサギだったり犬だったり、様々な動物が生まれる。蝶や果物が生まれた子も過去にはいたらしい。動物だけというわけではなさそうだ。
何が生まれるかによってその子の特性や今後どんな天使になっていくかがある程度判別できる。ひよこを孵した子たちは一般的な天使、狩猟本能を持つ犬科の動物の場合は戦いに出るバーチェスなどに、ウサギなど穏やかな気質のものが生まれた場合は癒しの力を授かる。
皆自分の卵にどんな命が宿るのか楽しみにしている。そして今日いよいよ卵が一斉に孵り始める。一人、また一人と卵にヒビができて卵が割れ命が生まれていく。
「先生、僕ひよこが生まれた!」
「私は猫!」
「先生これなに?」
「それは狼ね。強くなりますよ」
「ほんと?」
次々と喜びの声が上がる中一人だけずっと卵に変化がなく待ち続けている子がいた。
「うまれない」
特に焦った様子も悲しむ様子もないが、ワクワクして待っているというふうでもない。ただひたすらじっと卵を見つめている子。
その子は他の子と少し違って少々変わっている子だ。みんなと一緒に遊んでいたかと思うと突然地面にうつぶせに倒れてずっと動かなくなったり。おしゃべりをしていたのに突然黙って空を見上げたり。他の子たちからも変わった子だと言われていた。嫌われてはいないが親しい友達もいない。
その子だけ卵が孵らないのを見て周りの子たちはひそひそと、やっぱりねというようなことを言っている。
「こらこら、そういうことを言ってはダメですよ。天使は優しい心を持っているものです」
「はい、ごめんなさい先生」
そんな会話もその子は気にした様子がない。結局その日は卵が割れなかった。落ち込んでいるだろうかと顔を見てもやはり特に気にしていないようだ。
一つ確かなのは卵をとても大事に思っているということだ。落としてしまわないようにしっかりと両手で包み込んでいつも歩いている。
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