夢を叶えろ6(高校冬〜高校3年春

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お酒を飲んでいないのに顔を真っ赤にした勝利が話し掛けてきた。 「ねえ、手を繋いでもいい?」 勝利の言葉は嬉しかった。 多分、私も勝利と同じ様に顔を赤らめていたのに違いない 「うん」 手を握る 暖かい勝利の手 少しゴツゴツとした手 こんなにも男らしい手だったのか? 自然と手を繋いでいた時には気付かなかった。 エレベーターまでの数メートル、そしてエレベーターの中も手を離さない エントランスを出て、少し先に公園がある。 よし、そこでプレゼントを渡しながら告白しよう もう、離れたくない 公園が近づいてくる 胸の鼓動が強くなる 心臓の音が聞こえそうだ 「ねえ、勝利」 勝利が立ち止まる 「どうしたの?」 私は公園のベンチを指差して 「ちょっとあそこに座らない?」 多分、勝利も何かに気付いているのだろう。緊張した表情をしている 「う、うん」 顔に冷たい物が触れる 「あっ雪だ」 勝利が空を見る 「本当だ!雪だ!」 プレゼントを持つ手に力が入る 「ねえ、勝利」 その時だった。 「あっ莉乃ちゃん」 声の主は奈緒である。 公園の外から手を振ってきたので、私も笑顔で振り返す。 勝利が奈緒の方に2,3歩進み立ち止まる 「奈緒、お前、今日は何処行っていたんだ!」 何? いつものふざけた怒り口調とは違い、真剣な表情、口調で奈緒に怒る 私にも見せた事が無い表情だ。 いったい何があったの? 奈緒も驚いた表情で応える 「えっマネージャー達とクリスマス会よ」 「嘘つけ、港と二人で電車に乗る所を見たぞ!」 えっ? それって・・・・ 奈緒が公園に入ってきて、近づいてくる 「京子ちゃんとは、港君の家がある駅で待ち合わせたのよ」 「港の家でやったのか?」 「港君の家は小さい子が多いから、サンタクロースになってプレゼントをあげたのよ。私はトナカイだけど」 「耕太が心配してたぞ」 「耕太は知っているよ。今日の練習の時にサンタクロースの演技指導を港君にしてたもん」 勝利の早とちりで奈緒に怒っていたようだ やきもち・・・・ さっきまで伝えようとしていた気持ちが失われていく 勝利と奈緒ちゃんの姿が歪む 涙? 何で私泣いているの? 奈緒が莉乃の涙に気づく 「どうしたの莉乃ちゃん」 心配そうな顔をして私に近づいてくる 私は顔を隠しながら 「来ないで」 何で 何で 一度決めた自分の想いを自分の弱さで変えようとした自分が恥ずかしい 奈緒ちゃんは、何も知らないのに勝手に奈緒ちゃんのせいにした自分の醜さ 涙が止まらない 恥ずかしくて理由なんて言えない 言えない・・・ 「ごめんね」 「どうしたの?莉乃ちゃんは何も悪い事していないよ」 奈緒ちゃんの問い掛けにただただ「ごめんね」を繰り返した しばらく泣き やっと涙が止まる 私は深呼吸して心を落ち着かせる 自分に喝を入れて、普段通りに振る舞おうと笑顔で話し掛けた 「ごめんね。驚かせちゃったよね。これからお酒を買いにコンビニへ行くから奈緒ちゃんも一緒に行こう」 「私は家に帰らないと行けないから、ごめんね」 奈緒ちゃんが気を使ったのだろう 私は奈緒ちゃんの腕を掴んで 「そんな事を言わずにお願い」と引き止める 奈緒ちゃんがいないと自分の心にブレーキが掛けられない。私は必死に奈緒ちゃんを呼び留めて一緒にコンビニへ向かった。 はあ~私は何をやっているのだろう コンビニから戻りマンション前で奈緒ちゃんと別れる。 大きいビニール袋を二つ持った勝利とエレベーターに乗る 「これ、クリスマスプレゼント」 袋からネックレスを取り出して、勝利の首に付ける。 いきなりだったので勝利は驚いたが、「勝利、似合っているよ」 と笑顔で言うと、「ありがとう」と少し顔を赤らめて答えた。 家に帰ると皆はかなり酔っているようだ。 大きな声で話したり、最後は圭子さんがギターを持って歌を披露してくれた。 圭子さんが勝利に 「明日は追試なんだから勉強しなさい」 すると、文句を言いながら部屋に向かう 本当は私も行きたかったが、自分を抑える自信が無い 私はリビングに残ったのであった。 楽しい筈のクリスマスパーティーだったが、私の心はどんよりと曇ったままであった。 勝利が奈緒に抱く気持ちが幼馴染としての愛情とは思えない。 間違いなく女性としての愛情だ。 私と奈緒 どっちへの愛情が強いのだろう?
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