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「煩い。お前は桜守ぞ。桜守はこの四菱の桜を全て管理する一族ぞ。そしてお前の直属の主はこの佐久良ぞ。何故言うことが聞けん。」
そりゃうちのトップは殿だからだよ。といったところでまだまだお子様の姫には通じるわけがない。
それにしても今日はいつにもまして強力プッシュだ。
「すぐに片付けますのでお待ち下さい。それとついでに障子も閉めましょうか。」
そうすりゃ花びらも入ってこないし。
「あ、だめ、止めて。」
慌てて姫様の小さな手が私の袖を掴んだ。
か、かわいい……。
美男美女で有名な四菱家だが末姫様はまさに別格。烏のように黒黒とした御髪に白百合のように白い肌。くるりんと丸くて大きな目。ふっくりとグミみたいな唇。二年もしたらとんでもない美女になるのは間違いない。
……見とれてる場合じゃなかった、仕事せねば。
「ですが姫様は桜はお嫌いではないですか。庭の桜が目に入るのもお嫌でしょうに。」
更に動こうとする私の袖をグイグイと引っ張る姫様。
「いいの!見てる分にはいいの!だから閉めちゃだめ。」
わっがままー。全部切ってしまえって言ったくせに。
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