佐久良姫騒動記

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 だがそれがいい!って、私は決して変態ではない。  かくいう私だって去年元服したばっかりだ。年が近いので姫様の護衛として側仕えしているのだ。 「えっと。ではどうすれば。」 「部屋に入ってきた花びらを集めてくれればよい。ほんに憎らしい木よの。」 「かしこまりました。」  黙々と花びらを集めながら私はちらりちらりと姫様の憂い顔を盗み見る。  姫様は嫌いだ憎いのだと言いながらも愛おしそうに庭で優雅に花びらを振りまく桜を眺めている。  本当はあの樹の下で眺めたいんですよね。うん、その御心、私どもは十分に分かっております。お可哀想な姫様。 いえ、雨降り姫様……。  雨降り姫。それはなんとも美少女に相応しくない二つ名だ。 佐久良姫が行くところ必ず雨が降る。それは城中でも城下でも、下手すると領民皆が知っているジンクス、もとい事実。  花見に行けば嵐が起こり、祭りに行けば土砂降りになり、参拝すれば雷が落ちる。  物心ついてから今日まで、外にお出かけになるたびに天候に悩まされた。五回行けば四回は確実に悪天候、あとの一回はこの程度なら傘で済むかな、という具合だ。  特に酷いのが桜の時期。春は梅や桃、菜の花や水仙、芝桜と辺り一面花盛りだ。
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