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連れ出された場所は俳句の会。あくびを噛み殺しながら短冊を握っていると、ふと床の間の水盤に目が行った。
差してあるのはつつじの枝。先には薄桃色と白の蕾が大人しげについている。
あの状態ならここ五日ばかりのうちに花が開くだろうな、などと花の番人らしいことを思っていたら……。
「こ、これだあああああああ!」
「兵衛!何してるのですかっ!」
「あ。」
自分の考えに夢中になって、気がつけば水盤のつつじを引っこ抜いていた。
……そんな事もあったよな。
あの後母上にはこっぴどく叱られたけれど、既に野望に燃え上がっていた私には痛くも痒くもなかった。一晩掛けて構想を練り、図面を引いた。
自粛が明けて登城すると、まずは殿にお目通り願い、図面を御覧いただきながら仔細を説明し、了承を得た。
私ってプレゼン上手いな、とひとりごちたのは内緒だ。
次に人材募集。勿論第一は雨降り姫が大好きなことだ。第二の条件はに口が固くて第三に器用な人間。
いやあ、ふるいに掛けるのが大変だった。募集枠の軽く七倍の競争率だった。
とにかく設けた期限は一年、次の桜が咲くまでに完成させないといけなかった。
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