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入念な打ち合わせ、場所の選択、材料、金銭管理。なかなかに信頼のできる人間が集まってくれたおかげで安心して仕事を任せることが出来た。
お陰で私は姫様の警護と私自身がやらなければいけない仕事、『根回し』に専念できた。
そして今日!
とうとうこの日を迎えた。
「兵衛様、あと少しで姫様が参ります。」
「承知仕りました。ぼんぼりに明かりを入れよ。」
女中頭からの知らせを聞いて皆に号令を掛けた。仲間が点火したぼんぼりを枝垂れ桜の枝の周りに配置する。
ぼんぼりの明かりが少しずつ薄暗くなってきていた周囲を照らす。
「見事だ。」
桜の花びらが陽の光のもとで見るのとはまた違う幻想的な色合いを見せていた。
「じゃあ、姫様を迎えに行ってくる。」
急いで外に出ると、丁度姫様が籠から降りるところだった。
「兵衛、一体何事です。こんなぼろぼろの芝居小屋みたいなところに呼びつけて。不敬ではないか。」
ぼろ……一年掛けた仲間の苦労が一刀両断だな。まあ周りにバレないよう、偽装工作の意味もあったからな。
それにつけても、だ。
夕焼けに照らされた姫様、めちゃ可愛い。
お召し物は姫様お気に入りの白地に鶴の地模様で夕日を反射してきらきらと輝いている。桜色の半襟も帯締めも彼女によく似合っている。
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