事後

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事後

天空剣闘場大会一回戦は、最初は冷や汗ものだったが翼の完勝で無事終わった。 「それじゃコウ、帰ろっか?」 「帰るって、翼、お前二回戦進出なんだから対戦相手の試合とか観なくていいのか?」 「そうだね、じゃ、このまま二回戦の相手の分析をしよう!」 「あ・・、いや、翼・・、お前疲れてないか?、今日はもう休んだ方がいいのかな?」 「ううん、大丈夫、わたしも二回戦の相手の分析をしたい」 「そうか、わかった」 翼と俺は、再度控え室に戻った。試合前にはあまり目にもくれなかったが、今は控え室に備え付けのジュースや淹れたてのコーヒー、お酒にパンやクッキー、チョコレートがとても旨そうに見えた。 「翼、ビール飲んでもいいか?」俺は言った。 「高見沢さん」部屋の外にいた天空剣闘場大会の関係者が俺に話しかけた。 「なんでしょう?」 「試合の後ですからシャンパンは如何でしょう?、用意しますよ」 シャンパンか!、いいな!、VIPって感じ。 「よろしければお食事も用意しますよ、焼いたステーキとか」 「え?、そういうのもあるんですか?」 「試合の後ですからね」 おー、いいねー!、最高だよ。 「翼!、じゃ、勝利のお祝いだ!、シャンパンにしよーか!」 「コウ、わたしは高校生だよ、オレンジジュースでいい」 「わかった、じゃ翼はオレンジジュースで、俺はシャンパン!」 「コウ、これから対戦相手の分析をするんだからコウもジュースにして!」 翼が言うのでしかたなしに俺は炭酸ソーダと高級和牛のステーキとポテトを頼んだ。翼はオレンジジュースとミートスパゲッティを頼んだ。翼は食べるものは全然子供だ。 食事は分析用のパソコンから離れて奥のソファで食べた。天空剣闘場大会の関係者が移動式のテーブルをセッティングしてくれた。渋谷lightタワーの34階窓の外の景色は快晴もあって壮観だった。 今日の今日が試合だったため、あまり天空剣闘場大会のことを深く考えていなかったがやはりこの大会はそうとうに大きな大会だ。この豪華な控え室がそれを物語っている。 「なあ、翼」 「なに?」 「この大会って優勝したらなにが貰えるんだ?」 「優勝トロフィーと賞金1億円だよ」 「おーいいな!、それで2位や3位はどれくらい貰えるんだ?」 「1位以外は賞金は出ないよ、・・でもコウには優勝した時の話ってしてなかったよね?、優勝したら賞金は半分ずつでいい?」 俺も俺だけど翼も翼だ。結構いろいろ大事なことお互いなにも決めていなかった。それでも優勝したら賞金5000万円というのはわるくない。でもこれだけの大きな大会で1位以外賞金はないのか? 俺はスマホで調べてみた。たしかに天空剣闘場大会の賞金は1位のみ1億円だけだった。しかし、天空剣闘場大会の視聴率は国民の60パーセントが視聴する大きな大会で、かつこの天空剣闘場大会だけが世界にも同時配信される唯一の日本コンテンツだった。世界中でも各国30パーセントから80パーセントの視聴を得る大会。そのため、この大会で活躍した剣士は企業から広告に起用されたり、企業のサポートを受けたりと副収入で莫大に稼げるようだった。一回戦で負けた剣士も都道府県の代表なので多くの剣士が地元企業から支援を受けているらしい。 そして剣士の中で一番の副収入を得ているのが昨年の優勝者ではなく、昨年準決勝に進出した女性剣士・浅野レナで、スポンサーからの広告収入で300億以上の収入があるらしい。 うーん、剣士には夢多い大会なんだな。 食事の後、翼と俺は二回戦の対戦相手の分析を始めた。 二回戦の相手は、福島県代表の二宮時生。 二宮時生の一回戦の映像を翼と俺は観た。二宮時生の服装は黒の長袖シャツに黒のパンツ、黒のスニーカー、見た目は普通の剣士だった。ただ剣さばきは素人の俺が見てもわかるくらい個性的な剣の使い手だった。剣はすべて下段から上段へ旋風を起こすが如く剣を振り上げる。すべての剣は下段から上段へ振り上げるのだった。一回戦の試合も下段からの上段への剣撃で相手を追い込み、相手がたまらず後方へ跳んで逃げた瞬間を捉えて、下段から上段への旋風の剣で勝利している。 「翼、これはどうなんだ?、俺には凄く見えるんだけど。。」 「不合理だ」 「不合理?、どういうことだ?」 「剣の基本は、真っ直ぐに斬る、上から下に斬る、基本中の基本だけでなく、重力にも正しい基本だ、二宮時生の剣はそれとは正反対だ、重力にも反してる」 「じゃ、凄そうに見えて、今日の大場三郎太のようにかんたんにやっつけられるってことか?」 「いや、剣は大場三郎太よりかなり疾い、今日のようにかんたんにはいかない相手だ」 「そうか・・」 「でも、だからわからない、なぜこれだけ強いのに不合理な剣を使うのかが」 「そんなに気になるのか?」 「下段から振り上げる剣は重力に逆らうから僅かに剣が遅れる、剣と剣の戦いではその僅のところで決着が決まる、だからわからないんだ」 「昔のテレビゲームみたいにさ、下から殴って、上に上昇する方が見栄えからいいからじゃねーの?」 「……。」
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